MOON PHASE 雑記

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「ef - the latter tale.」

minori's 4th charrenge about "Will".』と、メーカー自ら示してくれてる通り、この作品のテーマは、どんなに深い悲しみや絶望に陥っても、支え合って人はそこから這い上がるし、その時、その人たちはどんな覚悟と選択をしたのだろう?と言う、意志の力の話。凄く評価が難しい作品だと思う。章が進めば進むほど、主人公の格好良さとヒロインの不幸度が比例していくような…。不幸のバーゲンセールと言うか、品評会状態になってる登場人物たちの境遇とシナリオだけを大雑把に斜め読みしてしまうと、それこそ、文章力のあるケータイ小説(笑)とか、スイーツ(笑)と揶揄されてもおかしくない陳腐なモノに聞こえてしまうかもしれないね。個人的に、この作品が凡作ではないと言えるのは、シナリオ、ボイス、音楽、グラフィック、ムービーなどが見事に融和した、きめ細やかな演出のおかげであることは確かです。ただし、注意して欲しいのは、誰にでも勧められる良作ではなく、人を選ぶ作品だと言うこと。まあ、ある意味、minoriが掲げてるキャッチフレーズ『We always keep minority spirit.』の精神に則ってるだけなんだろうけどさ。絶望を描くという一点に於いて妥協を許してないので、あるヒロイン―――と言っても消去法ですぐわかるから伏せても意味がないので書いてしまうと―――優子には、夕と再会する2年前から再会した後に至るまで、毎日毎晩のように義兄にレイプされ、虐待され続けていた消せない事実があり、それから目を逸らすことも、回避する術(選択肢)も一切ありません。処女を散らされた時についての心情吐露や、夕と結ばれた後にも稀に起こるフラッシュバックの描写など、かなり堪えるので、耐性のない人は覚悟して挑んで下さい。本音を言えば、やっと幸せを手に入れてこれからと言う矢先に事故死してしまう結末はあまりに惨いので、何となく腑に落ちないし、もっと暖かい未来をあげて欲しかったのですが、最終章で奇蹟の再会を果たした2人が納得してしまってるのだから、外野はそれを受け入れるしかなく、これも1つのハッピーエンドの形なのだと割り切るしかないんだろうな。優子編は、firstの第1章からlatterの第4章前半までを総括した内容にも関わらず、それは過去であり、“終わってる”ものだから、それを最後に持ってきた構成は非情に巧みであり、同時に異質だと思った。2人が言えず未練になってた、たった一言の為の、壮大な遠回りの物語とも言えよう。黒猫館?Ever17?『音羽』と言う舞台の仕掛けについては、プレイヤーを欺くためだけのミスリードではなく、もっと爽やかな理由だったので、そこは良かった。千尋編は、先行したTVアニメ版と結末以外ほぼ同じ。途中と第3章の最後は、電子レンジ君が千尋のために走り回ってたTVアニメ版の方が良かった気がしたんだけど、第4章の中で語られる真のエンディングを見たら、やっぱり気のせいだった。ミズキ編は犯罪(笑)。受験って、ミズキは中○生だったのかよ!それを喰った久瀬は……。ミズキは作中で一番好きなヒロインになりました。ちなみに彼女は、作中で一番の勝ち組(笑)。ミズキは、残された時間の少ない久瀬との幸せを謳歌した後、天才ヴァイオリニストの莫大な財産を手に入れて、持ち前のポジティブさで立ち止まることなく、新しい幸せを見つけるために前に進むんですね、わかります。公園のベンチで、ミズキの前に現れた少女は、描写が妙に思わせぶりだったので、生まれてくることが出来なかった夕と優子の子供の生まれ変わりと妄想したい。優子の生まれ変わり説の方がスッキリするけど、あの時点では、まだ天使優子が天に還ってないから泣く泣く却下。総括。firstの存在意義が、優子たちとの対比と、クリスマスの奇跡を起こすための人の繋がりの上で必要なぐらいで、大団円にもならず、絡みが薄かったのは不満。テーマを孕んだムービーは、新海版もシャフト版も秀逸で満足。優子の設定さえ許せる*1のであれば、シナリオも琴線に触れる箇所が多数あるし、プレイして損はないと思います。

*1:大前提かも