MOON PHASE 雑記

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「喰霊-零-」第12話

愛するものを、愛を信じて殺せるか。理性を失わせて欲望を増幅させる殺生石の特性を逆手に取って、黄泉と神楽の絆が導いた結末を、目を逸らすことなく描き切りました。第1話・第2話を先に見せることによって、行き着く先は悲劇しかいないのだと警鐘を鳴らしておきながらも、その中に救いを見出して、予想外に後味の悪さを引き摺らない綺麗な終わりを迎えられたのは素晴らしい。前回、黄泉が土宮家に対して抱いていた妬み、三途河との会話の後のケータイ破壊、そして神楽への態度などでミスリードを誘っておいて、実は、最後の宝物である神楽を守りたいと言う黄泉の望みに殺生石が応えた――のかどうかは定かではないけど、その為なら自分が消えることになってもかまわない想いの表れだったと言う構成の巧さが際立っていた。剣を交える毎に、黄泉との思い出が浮かぶ演出と挿入歌の相乗効果で涙が止まりません。全てを振り払うように感情を剥き出しにして戦う神楽の姿は、アニメ版で一番人間味に溢れていて魅力的に映ったなあ。それにしても、白叡を使役しながら剣で戦える神楽は、原作よりかなりスペックが高いな(笑)。最後に黄泉と神楽の前に姿を見せたノリちゃんは、やっぱりあの武器を渡す役目だったか。神楽がカテゴリDを斬れないトラウマを未だに引っ張っていてイライラさせられたんだけど、一番大切な人を斬ることを鍵にしたので納得。黄泉を殺した後の余韻の無さは、フィクションなのにリアルな感じ。そして2年後、全てが終わって原作へと繋がるエピローグ。剣ちゃん@白石稔来たー!と思わず声が出てしまった(笑)。てっきり、出たとしても、モブキャラに混じってるとか、成長した神楽とすれ違うとか、原作を知ってる人だけがニヤリとする程度だと思ってたのに、原作1巻冒頭をそのまま再現してくれるとは。二階堂女史は、まさかの精神幼児退行。元(?)室長は無事だったものの、一連の事件の責任を取って引退&桐ちゃんの保護者役に?室長には不死子ちゃん復帰(笑)。ノリちゃんが原作通りのノリちゃんに変貌してたのはちょっと強引かなあ。あの変態チックな明るさは、黄泉を救えなかった負い目の裏返しと考えればアリかもしれないが。黄泉の携帯ストラップをブレスレットにして身につけていて、細かい部分でも原作との繋がりに意味を持たせてるのは好感が持てる。友人から神楽が離れたのは、痛みを忘れて大切な人を作れなくなったからではなく、痛みを背負って大切な人が傷付くのを避けるため?まあ、本当に神楽が痛みを背負って前に進めたかどうかは、原作を読んでね、と言うことで。もちろん辻褄が合わない部分はあるんだけど、原作で深く語られることの無かった黄泉と神楽の過去を描いて原作に繋げると言う『零』の物語としては申し分のない出来でした。掴みのインパクトが、当初危惧していたただのサプライズではなく、物語の上で必然になっていく過程も良かった。四課や菖蒲室長の過去など、設定として割り切るには勿体ない取りこぼしがあるのは残念だ。ドラマCDで補完されるのかな?あとは、残された伏線と、元凶である三途河に制裁が下されてないモヤモヤ感があるので、多くの人を狂わせた三途河に相応の報いを受けて貰う為にも、是非、原作の九尾編までをアニメ版スタッフによるアレンジバージョン(黄泉が悪霊化した理由や扱いを変えるとか…)でやって欲しいなあ。